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法話

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法話--平成27年7月--

四諦--苦諦その4 病苦その2 病気にならない生き方その23
アレルギーその7 戦争アレルギーその3

「法治国 裸の王のいる怖さ」・・・新聞に載っていた川柳です。
自分が裸だとは気づかない。周囲の人もそのことを指摘しない、できない。
指摘する人を置かない、自分にとって為になる苦言など言ってくれる人がいない、ほんと~に困った人。

そんな困った総理大臣に今日本中が翻弄されています。
そもそも安倍さんを「裸の王様」にしたのは、彼自身の「おじいちゃんコンプレックス」であり、彼を取り巻くイエスマンの与党議員たちです。

尊敬してやまないおじいちゃん、岸信介元総理の悲願であった憲法改正への想いを引き継ぎ、日本の尊厳を取り戻すなどという妄想にかられ、その主役こそ自分だという思い上がりが「裸の王様」のモティベーションになっているのです。

大多数の憲法学者や国民から安保法案は違憲だという烙印を押され、極めて重大な疑義が突き付けられているのに、自民党、公明党の内部の議員から、「裸の総理」に上申できる者がいないのです。
実に情けない限りです。

まさに異常事態です。特に、公明党には失望しました。
「平和の党」という看板は完全に失われました。
自民党にべったり。そもそも公明党の支持母体の創価学会は、仏教徒じゃないんですか?
公明党の党員や支持者は、本心では大多数が法案に反対だそうです。
法案の意味を理解しようと思っても、意味がわからないからです。

元公明党副委員長二見伸明さんは、「山口代表が1990年に初当選したあと、私の議員事務所に来て、集団的自衛権について、彼は『集団的自衛権の行使は、長い間にわたって政府が違憲と判断してきた。それを解釈改憲で認めることはできない』と話していました。弁護士らしく、筋の通った話でしたよ。
それがなぜ、安倍政権の解釈改憲に賛成するのか。いつ変節してしまったのか。
まったく理解できません。今回の安保法案は、116時間もかけたのに、安倍総理からはまともな回答は一つもなかった。それに協力した公明党の行動は万死に値します。」と語っています。

おじいちゃんの亡霊に取りつかれ暴走する安倍総理、それを止められない与党議員のテイタラク。
「朝まで生テレビ」の出演をやめさせたり、報道番組「NEWS23」で自民党議員402人に対するアンケートの回答を止めさせたり、もはや与党議員は皆独裁者「裸の総理」の僕に成り下がってしまったようです。

そういえば、衆議院本会議採決の時に一斉に起立しましたが、その全員の表情には高揚感も喜びもなく、まるで魂を抜かれた幽霊のようでした。
議員一人一人に存在感が無いのです。これが国民の意志を代弁する国会ですか?

早大の長谷部恭男教授は、それを的確に表現しています。
「結局、今の政府・与党は、多数決で勝つということでしか自らの正しさを主張できない。確かに『多数決は正しい答えを出す』という定理はあります。ただし、この定理が成り立つには、各人が自らの判断に基づき、自律的に投票することが前提です。
しかし、自民党も公明党も、執行部が右と言えば右を向き、議員個人が自律的に投票しているわけではない以上、与党議員が何人投票しようと、実質的な投票総数は『1』。定理が成り立つ前提を欠いており、多数決の結果だから正しいとは言えません」

党首討論で、安倍首相は「法案の説明はまったく正しい。私が総理だから」と言い放ちました。
さらに、「米国の戦争に巻き込まれることは絶対にありえない」とまで断言したのです。
「憲法学者の責任と私たちの責任は違う」、「自衛隊のリスクは増えないしテロの心配などもない。」などと、誰が考えても筋が通らない独断的理屈を平然と述べる。
まさに確信犯的為政者です。

その高慢ちきな上から目線の態度に、主権者は国民であるという、国民目線はまったく感じられません。
目付きと言動はまさに独裁者です。
真摯に反論を聞いたり、説明したりする気などまったくなく、結論ありきの結論をただ押し付けることを、安倍さんは「説明」と言っているのです。

「法整備によって、抑止力は確実に高まります。
国の安全、国民のリスクは下がります。自衛隊員の危険性はむしろ減ります」などと、誰の眼にも黒だとわかるものを「絶対に白」だと言い切っているのです。

何よりも、テロリストに対して「抑止力」は意味をなさないのです。
たとえば、イラク戦争にイギリスやスペインが有志軍として参加しましたが、その後、マドリードで列車が爆破されて191人がなくなり、ロンドンで地下鉄とバスが爆破され56人が死亡しました。
これらは全部イラク戦争の報復だったのです。

日本が今後、集団的自衛権で中東での戦争に参加することになれば、日本でテロが起きる可能性は格段に上がります。
イスラム過激派から敵と見なされたら、新幹線でも、スカイツリーでも、東京マラソンでも、観光地でも人の集まる安全と言える場所はなくなります。

特に欧米人に人気のある、渋谷スクランブル交差点など格好の標的になるかもしれません。
年間二千万人に達しようという外国からの観光客は一気にいなくなります。
自衛隊員のリスクが増えるどころか、リスクが増えるのは国民全体になるのです。

確かに国際情勢をみると、武力紛争やテロは頻発しています。北朝鮮、中国などの脅威も否定することはできません。
「武力こそ戦争の抑止力」だというのが安保賛成派の理論ですが、ならばなぜ世界から戦争がなくならないのか。

そこには武力には武力で報復するという人間の性(サガ)があるのです。
その負の連鎖を断ち切るには、まず自分からは攻撃しないという専守防衛の理念こそが抑止力になるのです。
すべての国がそれに徹すれば理論的には戦争はなくなります。

日本が真の国際的リーダーになろうとするならば、外交努力を重ねて、軍事力に頼らない幅広い支援をすべきです。
それができるのは憲法9条のある日本だけなのです。世界から認められ自負できる平和主義国家・日本なのですから。

世界は今、日本の動向を注視しています。
特に、昨年以来「憲法9条を保持する日本国民」をノーベル平和賞候補に推薦しているノルウェー・ノーベル委員会の注目度は半端ではないと思います。

もし安保法制案が廃案になり、改めて日本が平和主義国家だと認定されれば、日本国民にノーベル平和賞が授与されるのは間違いないでしょう。
その場合皮肉にも"陰"の最大の功労者は安倍総理ということになります。

彼が悲願とするところの歴史に名を残すという栄誉に与ることになるのですから、「転んでもただは起きぬ」の、まさに強運の持ち主ということになります。

法案への理解が進むにつれて皮肉にもその反対の声は増しています。
連日国会周辺では、様々な団体の訴えが響き渡っています。
政治活動とは無縁そうな若者たちや子連れのママさん方が目立ちます。
彼らの呼びかけは同世代を動かし、各地に波及しています。
良識ある国民の声は確実に高まっています。

27日参議院での攻防が始まりました。
参院軽視ともいえる60日ルールを見据えた安倍さんのシナリオはとっくに出来上がっています。
彼の得意なハグラカセ応答で時間を稼ぎ時間切れに持ち込む作戦でしょう。
しかし、そんなバカにされたままの参院であっては「良識の府」どころかその誇りも存在価値もありません。
このまま安倍政権に日本の運命を任せておくわけにはいきません。

それにしても人の道の良識を説くべき宗教界こそもっと声を上げるべきです。
なかでも仏教界は真宗大谷派の毅然としたスタンスを見習うべきです。
宗務総長は「立憲精神を蹂躙する行為、絶対に認めるわけにはまいりません」と正面切って安倍政権を糾弾しています。

仏教精神に立ち返って冷静に判断するまでもなく、安保法制は明らかに戦争法案なのですから。
とりわけわが曹洞宗は何を躊躇しているのでしょう。
宗報や公報から何も聞こえてきません。
風見鶏の如く後出しジャンケンを狙っているのでしょうか。
情けないかぎりです。

合掌

曹洞宗正木山西光寺