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法話

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法話--平成30年8月--

四諦 八正道 正思惟 その3 ―バカ知恵―

八月も終わりだというのに、猛暑がぶり返してきました。
何十年か後の気候のシュミレーションをテレビでやっていましたが、地球の環境は人間が生きて行ける状況ではないそうです。

過去これまで地球上あまたもの生物が繁栄と絶滅を繰り返してきましたが、人類はもはや“絶滅危惧種”になってしまうのでしょうか。
その原因が自ら招いた環境破壊だとしたらまさに自業自得です。

あの恐竜さえも2億年も栄えたというのに、今の人類はその足元にも及ばないことになります。
恐竜絶滅は巨大隕石による環境破壊だったといわれていますが、それは“天災”であり、人類の自業自得による“人災”とは大きく異なるものです。なんという因果でしょう。

温暖化による海面上昇による国土の破壊。熱波による疾病や死亡。
干ばつによる食料不足問題。生態系の変化等々・・・地球は悲鳴をあげています。
そのしっぺ返しの一つが前回指摘した異常気象です。

新人類(クロマニヨン人)が出現してから20万年、今の人間の人口が爆発的に増えたのはここ100年足らずのことです。
地球上の人口は現在約73億人です。
2050年までには97億人になるとの予測です。
地球上で食料を賄えるのは80億人が限界だとの説があります。

地球を我が物顔で私物化し環境破壊を続けている人間。
73億人が出す様々なゴミによって地球上がまさにゴミ捨て場なっています。
人間の「バカ知恵」が生んだアスベストや核廃棄物など、有害で分解されないゴミは今や宇宙にまで拡散しています。

最近プラスティックやビニール製品などがクジラや魚の体内から出てきて、ようやく問題意識が高まってきましたが、ストローをマカロニや麦わらに替える程度ではなんの効果もありません。
全地球的規模の意識改革が必要です。

人口増加と環境悪化、食料不足などから人類の未来は暗雲に覆われています。
人類の“寿命”はあとどのくらいなのか。地球寿命のスパンからいえば人類の寿命はあと数秒かもしれません。
人間は自業自得の因果により確実に自滅に向かっています。

そんな人間の「バカ知恵」が抱える問題はほかにもあります。
第一次産業革命以来、人類は便利至上主義のもと猛烈な勢いで科学技術を発展させ豊かな生活を手にしました。

人間の欲望には限界がありません。
今や第四次産業革命時代ともいわれ、その中心にあるのがまさにAI(人工知能)です。
人間のIQを越え、将棋も囲碁のプロさえ敵いません。
もはやAIが先生になってしまいました。

車の自動運転やドローンのような無人飛行体の可能性も計り知れません。
空飛ぶ自動車が二年後の東京オリンピックの開会式デビューを目指しているというニュースがありましたが、その時にはもはや“サプライズ”とは言えないものになっているでしょう。
それほどAI技術の進歩の勢いは凄まじいのです。

AI技術があらゆる分野において人間にとって代わっています。
それはまさにAIによって人間自身が追い遣られているということです。
更にAIは人間の仕事を奪ってしまう心配以上に恐ろしい可能性を秘めているのです。

家事や介護ロボットから、人間では近づけない危険な場所での困難な作業用ロボットなど平和的利用のものなら大歓迎ですが、問題は戦争用に開発され無人殺傷兵器にまで及んでいるという事実です。
宇宙科学者池内了氏が発している懸念と警告を以下紹介します。

自我を持たず人間の命令に従って行動する「弱いAI」ではなく、自我を持ち自分で判断して自分の行動を自律的に決めていくという「強いAI」が出現した場合、AIロボットは単なる人間の模倣ではなく、人間を越えて自分の意志で行動する新しい「生物体?」になりかねないことです。

自らの意志で行動できる「強いAI」が戦争に動員される事態になれば、戦争の形態や戦術・戦略が大きく変化し、戦争は悲惨でより恐ろしい事態を招くことになってしまうでしょう。
この3月に亡くなった英国の物理学者ホーキンズは自律型AIは人類を絶滅させるかもしれない、と警告していました。

ようやくAIの軍事利用問題があちこちで議論されはじめました。
2017年(昨年)11月に日米欧中ロなど約90カ国が「自立型致死兵器システムについて」と題する政治専門家会議を開催しました。

しかし、ここでの議論は、各国が軍事利用へのAI兵器の拡大を警戒して規制を強くしなければならないが、民生分野の技術開発にもブレーキがかからないようにしなければならないという、危険と儲けの二股かけた議論に終始したようです。

どの国も率先して軍事利用を止めようということを主張せず、曖昧なままに終始したのです。
こんな状態を続けていれば、低コストでAI兵器を量産する国が出てくるかもしれません。

手塚治虫が「火の鳥」で、電子頭脳の命令で核戦争が勃発し人類が滅亡する未来を描いたのは50年前でしたが、手塚の想像力のすばらしさに感心するとともに、今やそれが現実となるかもしれない心配がでてきました。
(以上宇宙科学者池内了氏)

独自の適切な判断で行動してくれるロボットほど便利なものはないでしょう。
それを目指してロボット技術の開発は凄まじい勢いで進んでいます。
人類は明らかに、限りなく人間に近いロボット、アンドロイドの完成を目指しているのは確かです。

そして人類が最終的に目指すゴールは、間違いなく「心を持ったロボット」でしょう。
それはかなり遠い未来のことかもしれませんが、心を持つということは、適切な善悪判断ができるという理性が担保されなければなりません。

しかし、もし彼ら(ロボット)が自己主張や自己保身を優先し、理性の利かない存在になったら、もはや人間の手で彼らを制御できなくなる可能性があります。
厄介なモンスターになって人類に襲いかかりかねないのが未来のAIロボットです。

拙僧の陳腐な仮説ですが、やがて超高度に“進化”したロボットは、自らの手でロボットを生産する時代がきます。
IQは当然はるか人間以上に進化していますから、人間はもはや彼らに太刀打ちできません。

彼らが「ロボット権」を主張し人間に反旗を翻したその時、ついにロボットが人間を支配することになります。
人間はロボットに管理され追い遣られ、やがて人類はフェードアウトし絶滅に至るというシュミレーションです。

人類にとっての暗雲は環境破壊にかぎりません。
やがておとずれるそんなロボット時代こそ問題です。
人類の後地球上の主がロボットになるかもしれません。
まさに「ロボットの惑星」です。
どれもこれも人間自らの「バカ知恵」が招いた因果です。

ことのついでにもう一つ言わせていただくと、スマホ問題です。
先日所用で東京に行きましたが、どこもかしこもスマホ人間だらけでした。
拙僧もスマホは持っていますが、自分的にはほとんど使いこなせていないレベルです。
歳のせいか敢えて使いこなそうという興味も気力もありません。

ながらスマホで自転車運転の女子大生が歩行中の女性にぶつかり死亡させた事故がありましたが、自転車であっても法律上は自動車と同じで、3千万円から8千万円もの賠償を負うことになるそうです。

もはや無くてはならない便利なスマホですが、これも人間の「バカ知恵」が作った代物の一つです。
なぜバカかと言えば、それは肉体的にも精神的にも人間本来の感性と社会性を損ねているものだからです。

厚労省がスマホ依存症者数を発表しましたが、その数全国でなんと250万人以上にもなるとのこと。
スマホはまさに「スマアホ」人間をつくっています。

以上、人間は自らの「バカ知恵」によって未来を危うくさせているという趣旨を論じてきましたが、要するに、どんな優れた「知恵」でも、「正思惟」がなければタダノ「バカ知恵」にすぎないということです。

折角の人類のこれまで築き上げてきた素晴らしい知恵が“バカ”にならないためには人間はもっと賢くならなければなりません。そのための教えが仏教の智慧です。
人類が未来に少しでも長く“生存”するためには、その智慧が絶対に必要なのです。

合掌

曹洞宗正木山西光寺